みなさん，こんにちは。えいごりらです。
今日は青森県つがる市の向陽小学校にやってきました。

つがる市は青森県の中西部，津軽半島の付け根に位置します。日本海に面しており，冬には深い雪に覆われるのだとか。今日の最高気温は3.5℃。うっすらと雪が積もっています。

向陽小学校はなんと創立146年で，県内でも最も古い学校の一つです。江戸時代初期以来，津軽藩の歴代藩主が津軽平野北西部の新田開発に力を注いでおり，その開発事業の拠点として設置された奉行所の近くに開校しました。

児童数は239人。7年前より新校舎となり，その際にオープン教室を導入したそうです。教室と廊下の間の壁がないため，学級同士での交流がしやすかったり，外国語活動で協力しやすかったりするといったメリットがあります。

校内に入ると，英語の掲示物がありました。低学年の生活科と英語を関連させたポスターです。

オクラは英語でもOkraなんですね。

向陽小学校では低学年から，週1コマのモジュール授業で外国語活動に取り組んでいます。中学年は年間35時間の45分授業の他，時数外で週2回のモジュール授業を実施，高学年は年間70時間のうち60時間を45分授業，10時間をモジュール授業として行っています。

高学年では70時間中40時間にALTが入っているほか，日本人の英語講師を市で採用しており，中学年ではほぼ毎時間，厚みのある体制で英語の授業ができているそうです。

今日授業を見せていただくのは6年1組。授業中もたくさんの声が出る積極的なクラスです。それでも，最初は発表を恥ずかしがる児童も多かったのだとか。

児童は落ち着きがあり，普段からしっかりと自分の考えを持って授業に取り組んでいるそうです。書くことが得意な児童が多く，英語でも感想を書かせるとたくさんの意見を書くため，時間調整がたいへんとのこと。でも，先生にとっては，それがとっても嬉しいのです。

担任の下山圭子先生です。専門は音楽。もともと英語との関連はありませんでしたが，海外アーティストが好きで，「好きな歌手の歌詞を聞き取りたい」との目標を持って英語に接しています。

英語の中核教員の指定を受けたことがきっかけで，横須賀市で研修を受け，英語の道へと進まれました。「自信をもって人とかかわれる児童に成長してほしい」との願いから，そのためのツールとして児童が英語を身に付けられるよう，日々の授業に取り組んでいらっしゃいます。

こちらはALTのペレズ・ジョバンニ・イマニュエル（Perez Giovanni Emmanuel）先生。児童にはGio先生と呼ばれています。アメリカ・カリフォルニア州のロサンゼルス出身で，JETプログラムでつがる市に派遣され，今年で5年目。

ロサンゼルスは温暖で雪がほとんど降らないため，はじめてつがる市の雪を見た時にはびっくりしたそうです。最初の1か月は楽しかったものの，次第に雪かきが疲れるようになったとのこと（笑）。
日本が大好きで，特に地域のお祭りである「立佞武多（たちねぷた）」は最高なのだとか。グループに入って毎年参加しているそうです。

さて，今日は『We Can! 1』Unit 6 I want to go to Italy.を扱います。まずは全体であいさつをした後，教室内を歩き回り，別の班の人ともあいさつをします。

続いて，日付，天気を全員で確認します。

次に授業の概要についてGio先生が簡単な英語で説明した後，「好きな国」についてSmall Talkを行います。まずはGio先生と児童のやり取りから。前の時間に習った表現を復習しながら，発声を行います。

続いて児童同士でもSmall Talkのやり取りを行います。前の時間に書いたワークシートを確認しながら，自分の好きな国について友達にガンガン話しかけます。Gio先生にもガンガン行っています。

Gio先生は，昔は日本語も使って授業を行っていたそうです。しかし，そうすると児童が英語を使わなくなるため，学校や先生と相談して，あえて日本語を封印したのだとか。

つがる市は英語を使う環境が少なく，児童も最初はなかなか英語を使おうとしませんでしたが，ここ数年で大分変わってきたとのこと。今では授業だけでなく，普通の時間でも英語の会話を楽しんでいます。

続いて，本時の内容について確認します。本時はI want to go to Italy.の5/8時間目。「旅行会社の設定」で役割を分担し，おすすめの国と理由，食べ物等を紹介します。

まずは調べる内容や話す内容について，地図帳で確認します。他教科との関連を図れることは，学担が指導する小学校英語の大きな魅力の一つです。

児童は世界の国々に興味津々。食い入るように地図帳を見つめています。

確認が終わったら，オリジナルのワークシートを使って話す内容を整理します。ワークシートは半分に折ることで，前の時間に記入した内容が生かされるようになっています。

準備ができたら，さっそくやり取りを行います。最初は隣の席の人と話し，続いて班の中で相手を替えて，同じ内容を4～5人と話します。『We Can!』ではポスターを作って紹介する活動ですが，今回は代わりに地図帳を活用しておすすめの国を紹介します。

児童が自信をもって会話できるようにするため，しっかりと練習量を確保することを意識しているそうです。会話を実施している最中は英語のBGMを流し，雰囲気づくりを行っています。

ひととおり会話が終わったら，一度中断して確認を行います。どうすれば伝えやすいか，聞きやすいかを児童から引き出します。先生は児童の発言を黒板にまとめていきます。

伝える側の工夫としては「ゆっくり，クリアボイス，目を見る」といった意見が，聞く側の工夫としては「うなずく，反応する，相槌を打つ」といった意見が出てきました。Excellent!

それらを踏まえて，再度「旅行会社」を行います。Gio先生も参加して，児童の「おすすめの国紹介」を熱心に聞いています。Gio先生に自分の英語が伝わると，児童も嬉しそう！

下山先生によると，授業では児童に完璧な英語を求めるのではなく，コミュニケーションを通して，友達のことをもっとよく知ることができるように指導しているのだそうです。直接の英単語を知らなくても，自分が知っている英単語で工夫して表現できるような力を身に付けてほしいとのこと。

そんな先生の願い通り，児童は知っている表現やジェスチャーを目いっぱい使っておすすめの国を紹介し，やりとりをしていました。最後に振り返りカードに記入して，今日の授業はおしまい！

校長の七戸完三郎先生にもお話を伺いました。校長先生は授業をされる先生方に，児童が「外国語が好き」と思える授業づくりをお願いしているのだそうです。また，児童が「積極的にコミュニケーションを取れるような」授業づくりを推進しています。

英語教育への取り組みに関して，最初は手探りの状態でした。そこでまずは先生方の研修のため，2年間で学級担任全員を県外の実践校に派遣したのだそうです。各県，各校の良い取り組みを吸収し，校内で共有化をはかって，授業づくりに生かしているとのこと。また，小中連携を進めていく上で，中学校区でCAN-DOリストを作成し，地域全体で英語力向上に励んでいます。

これらの取り組みの結果，英語に興味や楽しさを感じている児童が増えており，児童の好きな教科でも，英語は体育に次いで2位にランクインしているそうです。「休み時間に児童同士が英語で会話をしたり，ALTの先生と積極的にかかわったりしている様子を見ると，とてもうれしくなります」と語ってくださいました。

今回のレポートはこれでおしまい。
次回もお楽しみに！

（取材日：2018年12月18日）