

えいごりらが全国の学校を訪問し、
授業の様子や取り組みをレポートします!
みなさん、こんにちは。えいごりらです。
今日は香川県高松市にある古高松南小学校にやってきました。713名の児童が学んでいます。

令和5年度の香川県小学校教育研究会外国語部会研究発表会に向けて、学校をあげて英語教育に取り組んでいるよ。
令和4年の4月からは、多目的室を1年生から3年生が使う「English room」としても開室して、特別な机を設置したんだって。
その名も、Naoshima Desk&Chair(直島デスクアンドチェア)!


そのネーミングの通り、机と椅子の両方の役割があるんだ。
やり取りをするときには、机を椅子として使っているよ。背中合わせで立って先生の合図で向き合ってスタートする「Back to back」から「3,2,1,Go!」で向かい合わせになって、「Hello」からコミュニケーションを始めるそうだよ。
本校の橋本康裕(はしもと やすひろ)校長先生が、以前直島小学校に勤務していたときに、国際理解教室で使っていたものをまねて特注で作ったんだって!
1年生から3年生までが使いやすいように、高さは35cmと決めているこだわりぶりだよ。
(※ 直島小学校:これまで外国語教育の研究開発学校として数回指定されたことがある実践研究推進校)
今日は、その直島小学校に勤務されていた、ぼくと仲よし濵中紀子(はまなか みちこ)先生も一緒だよ。

研究授業は、6年生の 「Let’s think about our food.」
担任の古枝愛未(ふるえだ まなみ)先生は、なんと3年目。これから英語をがんばっていこうと燃えている若手の先生なんだ。お隣はALTのロン先生だよ。

まずは帯活動。教科書の巻末にあるSounds and Lettersを、毎時間必ずやっているよ。
デジタルブックを使って、今日は「th」について勉強したんだ。

次はSmall talk。上で紹介した「Back to back」というやり方で進めるよ。
これで、一瞬で英語の頭に切り替えられるんだ。

さあ、いよいよコミュニケーション活動。
「ペアに紹介して自分のオリジナルカレーを知ってもらおう」という、めあてを確認したよ。

まずは、古枝先生とALTのロン先生がどんなふうに紹介すればいいのか、モデルを見せてくれたよ。
古枝先生が考えたのはコロコロカレー! いろんな豆がたっぷり入っていて、美味しそう。
でもね、ロン先生はそら豆(fava beans)が苦手で、理由は 「I don’t like the smell!」なんだって。
みんなは、どんなオリジナルカレーを考えたんだろう。

この子が考えたのはトマトカレー!
熊本産のトマトに、ミニトマト、そしてトマトソース!
とにかくトマト! トマト好きにはたまらないカレーだね。どうしてトマトだけで作ったのか、ついいろいろ聞いてみたくなるよ。

友達からは「カラフルなトマトが入っているといいんじゃない」なんてアドバイスをもらって、嬉しそうだったよ。

事後討議会にもお邪魔させてもらったよ。
香川県では校内研修を「現教」(現職教育の略称)と言って、各校で取り組んでいるんだ。
研究が盛んな香川県の伝統的な教員文化の一つだね。

Small talk は単元に関わるようなものであるべきなのか、といった議論があったよ。
今日は「How much 〜?」を使ってSmall talkをしたけど、実際のコミュニケーション活動ではあまり使われないという意見だよ。
うーん、難しいね。
ある先生からは「カレーの紹介という目的だったら、値段のことを気にしない。『How much〜?』をつなげるなら、『今日は500円しか持ってないけどなにを買う?』といった設定があるといいんじゃないか」といった意見があったよ。
なるほどねえ。

こちらは現教主任(研究主任)の伏見恵子(ふしみ けいこ)先生。
実は本時の授業は、校内では4回目の授業なんだって。
「リレー式授業づくり」といって、1組から4組まで授業日をずらして、同じ時間の授業を何度も先生たちが見られるやり方なんだ。
学年団の先生たちの授業力を向上させたり、よりよい授業にグレードアップしたりするための工夫だよ。
そのおかげで、2クラス目の授業から「コミュニケーションメモ」というワークシートを使って中間評価を可視化することにしたんだけど、回を追うごとに言語活動が改善されたんだ。


最後に、濵中先生が指導者として助言をくれたよ。
この単元は言語材料が多く、指導が難しいところです。単語も多いし、単数複数も考えないといけない。過去形のwasなども出てきます。
ですから、最初からゴール活動だけをめがけて進めるのではなく、幅広く話題や表現を共有しながら、徐々にゴール活動がはっきりと見えるようにするのがよいと思われます。実際そのように単元構成を工夫されていました。
見方・考え方を働かせるためには、コミュニケーションの目的意識や相手意識が大事です。
今日の授業では、オリジナルカレーを友達に伝えたい、そして気に入ってもらいたいというのが目的でした。
あとでロン先生に聞くと、ご出身のフィリピンではカレーの種類がチキンカレー1つしかないらしいのです。驚きですよね。
それに比べると日本はたくさんカレーのバリエーションがあって、いろんな組み合わせが考えられる。
じゃあ、みんなはどんなカレーを作りたいかな。
このような導入で、自分のカレーのよさを伝える意欲を高めてもよかったかもしれませんね。
大事なのは、練習して型を覚えてからコミュニケーションをするのではなく、コミュニケーションをやりながら力をつけていくということ。
ふつうは言語活動を1回やり、中間評価を経て、2回して終わり。
それを今日は、短い指導を入れながら3回連続でとにかく言語活動をやってみようという進め方でした。
まずはとにかくやってみる。中学校の英語でもそのような取り組みが進められています。
今日の授業はそういった新しいチャレンジが見えた授業でした。
小学校では、方略的なコミュニケーション能力が大事になってきます。
たとえばSmall talkでは、伝えたくてもうまく表現が出ないときに、どうするか。
近い言葉で言い換えてみたり、質問してみんなで考えてみたり。聞く側も、「Me too.」とリアクションしたり、「Sorry?」と聞き返したり。
Small Talkは、単元にはひもづいていないけれど帯学習として横につながっている、という取り組みも考えられます。
大事なのは、既習表現を何度も使い、会話を継続するための方法を学ぶということです。
古枝先生は「はじめての校内研でとても緊張しました。もっと子どもたちの思いを引き出したかったですが、コミュニケーションメモを導入したことで、活動が取り組みやすくなっていたのがよかったです。これからも子どもたちと一緒に、よりよい授業を考えていきたいです」と話していたよ。

最後に橋本校長先生に話を聞いたよ。
本校は、令和5年度の香川県小学校教育研究会外国語部会研究発表会の発表校となっています。
「響き合いながら、主体的に学ぶ児童の育成〜全員が『したい』『聴きたい』『伝えたい』授業をめざして〜」を研究主題として、英語の授業でも主体的に学ぶ子どもたちを育てていきたいと考えています。
子どもたちがしっかりと英語に親しみ、英語を使ってコミュニケーションをしたいと思えるような授業づくりをすることも1つのテーマです。
そのために、週の時程では月曜から木曜の朝の会の中に毎日3分間の「English time」と、金曜には15分間の「Long English time」を設けて、歌を歌ったり、チャンツをしたり、日々英語に親しめるよう工夫しています。
また、小学生の特性も考慮して、子どもたちの実態をよく知った学級担任を中心にした授業実践も積み上げています。
ベテランから若手まで、全職員が一丸となって取り組めるのが本校の魅力です。
これからも、子どもたちが力をつけられるようがんばっていきます。

【今回の授業者・指導者と本校の現教部】
事後討議会でも、授業改善の意見を出し合いながら、みんながお互いを助け合おうとする雰囲気がとっても素敵だったよ!
チーム古高松南小学校の取り組みが今後も楽しみだね!
今回のレポートはこれでおしまい。
次回もお楽しみに!
(取材:えいごりら)
【参考文献】
橋本康裕(2012)「成果をすぐに活かすリレー式授業づくり」『「ワークショップ型校内研修」充実化・活性化のための戦略&プラン43』教育開発研究所、村川雅弘(鳴門教育大学教授)編
(取材日:2022年12月8日)

第67回 2025年12月3日
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第66回 2025年11月10日
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第65回 2025年10月29日
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第64回 2025年8月6日
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第63回 2025年6月2日
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第62回 2025年4月22日
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第60回 2024年3月11日
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第59回 2024年1月18日
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第58回 2023年12月27日
奈良県葛城市立新庄小学校

第57回 2023年11月24日
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第56回 2023年7月7日
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第55回 2023年4月17日
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第53回 2023年4月3日
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第51回 2023年2月20日
香川県高松市立古高松南小学校

第50回 2023年2月13日
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第49回 2023年1月23日
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第47回 2022年12月13日
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第46回 2022年12月2日
岡山県立岡山操山中学校

第45回 2022年8月31日
岐阜県多治見市立笠原中学校

第44回 2022年8月10日
石川県野々市市立富陽小学校

第43回 2022年7月26日
愛媛県松山市立久谷中学校

第42回 2022年6月29日
秋田県由利本荘市立由利中学校

第41回 2022年5月9日
群馬県みどり市立大間々南小学校

第40回 2022年4月28日
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第39回 2022年4月25日
広島県廿日市市立七尾中学校

第38回 2022年4月20日
福島県西白河郡西郷村立米小学校

第37回 2022年4月1日
茨城県つくば市立みどりの学園義務教育学校

第36回 2022年3月30日
岐阜県大垣市立中川小学校

第35回 2022年3月25日
長崎県五島市立奈留小中学校

第34回 2022年3月11日
山口県下関市立長成中学校

第33回 2022年2月4日
佐賀県伊万里市立二里小学校

第32回 2022年2月4日
岩手県奥州市立水沢小学校

第31回 2021年11月15日
北海道上川郡東川町立東川小学校

第30回 2021年10月25日
滋賀県湖南市立甲西北中学校

第29回 2021年9月2日
兵庫県たつの市立龍野西中学校

第28回 2021年3月17日
群馬県前橋市立細井小学校

第27回 2021年1月8日
千葉県富津市立吉野小学校

第26回 2020年12月16日
新潟県新潟市立上所小学校

第25回 2020年11月13日
東京都品川区立芳水小学校

第24回 2020年1月24日
神奈川県横浜市立荏田東第一小学校

第23回 2019年6月21日
宮城県大崎市立古川第五小学校

第22回 2019年5月31日
秋田県大館市教育委員会
大館市立上川沿小学校

第21回 2019年5月24日
山形県川西町立小松小学校

第20回 2019年5月17日
福島県白河市立みさか小学校

第19回 2019年5月10日
大阪府高槻市立大冠小学校

第18回 2019年4月26日
宮城県利府町立青山小学校

第17回 2019年4月19日
静岡大学教育学部附属浜松小学校

第16回 2019年4月12日
広島県海田町立海田小学校

第15回 2019年3月29日
宮城県七ヶ浜町立亦楽小学校

第14回 2019年3月22日
山形県庄内町立余目第四小学校

第13回 2019年3月15日
岡山県岡山市立石井小学校

第12回 2019年3月1日
鹿児島県薩摩川内市立平佐西小学校:後編

第11回 2019年2月22日
鹿児島県薩摩川内市立平佐西小学校:前編

第10回 2019年2月15日
茨城県守谷市立守谷小学校

第9回 2019年2月8日
三重県松阪市立香肌小学校

第8回 2019年2月1日
青森県つがる市立向陽小学校

第7回 2019年1月25日
北海道旭川市立富沢小学校

第6回 2019年1月17日
高知県高知市立春野東小学校

第5回 2019年1月11日
島根県松江市立義務教育学校八束学園

第4回 2018年12月28日
千葉県我孫子市湖北地区公民館

第3回 2018年12月21日
千葉県富津市立大貫小学校

第2回 2018年12月13日
東京都港区立笄小学校

第1回 2018年12月12日
東京都文京区立誠之小学校