みなさん，こんにちは。えいごりらです。
今日は島根県松江市の義務教育学校，八束（やつか）学園にやってきました。

八束学園は，島根県東部の中海に浮かぶ「大根島（だいこんじま）」のほぼ中心に位置する学校です。大根島は今から約19万年前に噴火活動によってできた火山島で，名産はダイコン！ではなく牡丹と雲州人参（高麗人参）。肥沃な火山灰土質がその栽培に一役買っています。

八束学園は島根県内初の小中一貫校として，2011(平成23)年に八束小学校と八束中学校の校舎が一体化して誕生しました。今年度からは義務教育学校として新たなスタートを切っており，9学年制で前期4年，中期3年，後期2年の3ブロックに分けて指導計画を編成しています。

全校の児童生徒数は262人。学園の児童生徒はほとんどが大根島とその隣にある江島から通学しています。幼い頃から同じ島内で育ったこともあり，保護者や地域の方は家族のような距離感で児童に接しているのだとか。

校内にはたくさんの掲示物が貼られており，『We Can!』や『Let's Try!』を使った授業の様子がうかがえます。

幼少時から一緒に生活してきたという環境から，いまさら日本語では尋ねないようなこと（例えば好きな食べ物やスポーツなど，ごくごく基本的なこと）も英語だからこそ尋ねることができ，児童同士の新しい発見につながっているそうです。

今回授業を見せていただいたのは，6年1組。とにかく人が大好きなクラスで，挨拶はもちろん，笑顔で積極的に話しかけてくれます。

このクラスは，4年生の後半から5年生の約1年半，毎週水曜日に15分間，1～6年生で取り組む「わくわく英語」で外国語に慣れ親しんできました。そして5年生では週1時間，6年生になり週2時間（年間70時間）の外国語活動に取り組んでいます。

担任の錦織栄子（にしこおりえいこ）先生です。専門科目は体育なのだとか。スポーツはもちろん，人と話すことが大好きだそうです。6年1組の元気いっぱいな雰囲気は，錦織先生のキャラクターが影響しているのかも…！

先生は大学卒業後に半年間滞在したオーストラリアでのワーキングホリデーをきっかけに，英語でコミュニケーションがとれる先生を志したそうです。その時に感じた“英語で自分の思いを発信したい”という思いが，今の活動の原動力になっているのだとか。

そのため，児童には日本語・英語を問わず自分の思いを発信し，相手の意見もしっかりと聞いて返すという，相互にコミュニケーションをとることの重要性を伝えています。

さて，今日の授業では『We Can! 2』Unit4 I like my town.の単元を扱います。

同じ島根県内の吉賀町立柿木小学校の児童に向けて，自分達が住む地域のPR動画を撮影し，送ることを目標に学習を進めてきました。今日はその最終段階の動画撮影の時間です。

はじめに，PR動画を撮影する上で大切なことを担任の先生から説明します。特に相手意識，目的意識を持って紹介することをしっかりと確認させます。

続いて，相手意識，目的意識を持って紹介することをグループで共有します。児童も真剣に取り組みます。

チェックリストを用いて確認。

ここからはいよいよ本番！　グループごとに松江市と大根島を紹介するPR動画を撮影します。クラスは事前に松江市を紹介するグループと大根島を紹介するグループとに分けられています。

自分たちが住む地域にどんな施設やモノがあるか，あるいはないかを既習事項の“We have ～.”“We don't have ～.”を用いて表現します。『We Can! 2』に記載されていない単語や文章表現でも，児童が「伝えたい！」と思う気持ちを大切に紹介するようにしているそうです。

児童の元気なジェスチャーに，カメラマンの錦織先生も思わずつられてしまいました。

他校に向けて活動することで，新たな交流も生まれます。柿木小学校のみんなに届けるのが楽しみ！

グループの発表内容に対し，良かったところやアドバイスをオーディエンスが指摘します。

「言葉による説明だけでなく，カラダ全体を使ったジェスチャーを取り入れていた点がよかった。」担任の先生も，グループごとに良かった点とアドバイスを一点ずつ指摘します。

錦織先生いわく，多くの児童が小さい頃から一緒に生活してきているため，あうんの呼吸でお互いを察することができるそうです。一方，ノンバーバルなコミュニケーションに長けている分，思っていることを言葉できちんと伝えることに課題があるとのこと。そのため，外国語の指導では自分の言葉で，思いをストレートに伝えるという活動を大切にしています。

最後に，ALTのデービット先生の掛け声“Come to Matsue and Yatsuka!”を受けて全員が集合！　柿木小学校の児童に向けて手を振る動画を撮って，全ての撮影が終了です。

授業のまとめとして，しっかりとふり返りを行います。担任の先生がふり返りの視点を共有した後，各自で感想を書いていきます。

最後に感想を友達に伝えあい，共有します。

ここでも，しっかりと相手の目を見てコミュニケーションをとることができていました。お互いに頑張りをねぎらいあって，にっこり！

授業後，学園長の岩田美登里先生にお話を伺いました。

義務教育学校の八束学園では，後期課程（中学校）の先生がT2で授業に参加でき，学習内容や教材を前期課程（小学校）の先生と共有できることが大きなメリットとなっているそうです。また，後期課程の先生が今の5・6年生のことを知っているという点も，小中の円滑な接続という観点で大きいとのこと。

校内では推進役の錦織先生を中心に先生方のスキルアップを行っているそうです。昨年度は，1～2時間などのまとまった時間を設けて行う研修に加えて，お昼の時間などを使って短時間のミニ研修を行っていました。研修への参加は任意。各自が負担のない形で小さなスキル積み重ねたことが，先生方全体のスキルアップにつながったのだとか。

また，今年度は夏の研修を行うとともに，八束学園が会場となった3回の研究授業に任意で参加し，授業から学ぶ研修に力を入れていたそうです。錦織先生がそれらの授業を行い，他の先生方に道筋を示してくれるので，校長先生としては本当に助かっており，安心して任せられていると話してくださいました。

今回のレポートはこれでおしまい。
次回もお楽しみに！

（取材日：2018年12月6日）