

えいごりらが全国の学校を訪問し、
授業の様子や取り組みをレポートします!
みなさん、こんにちは。えいごりらです。
今回は、なんと四国初上陸です!
教科書にも登場する俳人、正岡子規が生まれた松山市にやってきました!
夏目漱石の小説「坊っちゃん」の舞台にもなっているところなんだよ。
お伺いさせていただく学校は、松山市立久谷中学校です。


田畑や山に囲まれた約250名の学校で、近くには四国八十八箇所霊場の第46番札所「浄瑠璃寺」、第47番札所「八坂寺」があります。


今日は2年生の授業を拝見させていただきました。
授業をされるのは、河野圭美(こうの たまみ)先生です。
リテラチャー・サークルという話し合い活動の授業に取り組んでいるよ。

生徒に感動を与え、生き方について考えさせるような英語の授業がしたい、と思って教員を目指しました。しかし、実際に教員になってみると、現実は難しく、授業がうまくいかないことで悩む毎日が10年以上続きました。特に教科書の本文の指導において、教師主導の指導から、生徒が主体的に学ぶ指導方法への転換を模索してきました。前任校の愛媛大学教育学部附属中学校で、生徒が真剣に教材に向き合い、生き生きと英語を話し、英語を使って理解を深めていくことができる授業を目指して研究していたところ、愛媛大学の立松大祐(たてまつ だいすけ)先生にリテラチャー・サークルという言語活動を教えていただきました。
リテラチャー・サークルとは、1990年代にアメリカから普及してきた話し合い活動です。生徒はある程度のまとまった分量の英文を読み、その内容についてグループで話し合う活動です。
私が育てたい生徒の姿が、この言語活動で見ることができるかもしれない、と思いました。それ以来、試行錯誤を続けながら、リテラチャー・サークルの実践研究を行っています。
下記は、中学3年生で初めてリテラチャー・サークルにチャレンジした生徒の感想文の例です。
・入試で長文がスラスラ読めるようになっていた。
・日本語ではなかなか話せないことも、英語ではどんどん話せるようになった。
・4技能のアップにつながった。
・文法の力も身に付いた。
・習ったことを使いこなすことの大切さを知った。
・コミュニケーションは、積極的に聞き取ろうとしたり、話そうとしたりする気持ちが大切だと分かった。
・リテラチャー・サークルをするために学校に行っていました!
附属中学校でリテラチャー・サークルの研究を続け4年が経ったとき、公立中学校へ異動になりました。公立中学校でももちろん、リテラチャー・サークルをしたいと思い、生徒の実態に合ったやり方を考えました。
ここでは、令和3年度に2年生で行った実践を紹介します。
本実践は2年生で、NEW HORIZON English Course 2のLet's Read 3 (pp.122-126) を読み、その内容についてグループごとに話し合いました。グループ編成は、1グループ男女混合5名とし、話し合いが円滑に進められるように、コミュニケーション能力、性格や日頃の人間関係の様子などに配慮して教師が決めました。
話し合い活動を行うために、グループの一人ひとりが異なる読みの役割で本文を読みます。他にもいくつかの役割がありますが、生徒の実態や英語授業の取り組みに合わせ、本実践では、以下の五つの役割を採用しました。
・Summarizer
他のメンバーに本文の内容がどのようなものであったかを思い出させるために、本文の要約をする。
・Word Wizard
本文を読んで大切だと思う単語や気になる単語、調べてみたい単語を選んで例文を作り、グループメンバーに紹介する。
・Illustrator
本文の内容に関する重要な場面や印象深い場面のイラストを描く。描いた絵を他のメンバーに見せ、英語で説明する。
・Questioner
本文の内容について質問を3個程作る。グループに質問を投げかけ、他のメンバーは英語で答える。
・Connector
本文の内容と、自分の経験や学校・社会での出来事とのつながりを話す。

Summarizerワークシート

Word Wizardワークシート

Illustratorワークシート

Questionerワークシート

Connectorワークシート




次の5段階の手順でリテラチャー・サークルを行いました。
(1)「準備」
生徒はLet's Read 3 (pp.122-126)を読み、それぞれが担当する役割に応じて「話し合い」への準備を行います。今回の実践では、「準備」は前時に行いましたが、慣れてきたら家庭学習で行わせることもできます。
(2)「ジグソー活動」
各グループから同じ役割の学習者が集まり、5人程度のグループを作ります。同じ役割の学習者同士で話し合い、アドバイスをし合います。分からなかったところを聞き合ったり、友達からアドバイスをもらったりして、更によい内容にすることで、それぞれのグループに戻ったとき、自信をもって発表できることを目指しています。
(3)「ミニ・レッスン」
話し合う際に有用な英語表現を導入したり、前回の授業で行った話し合いの様子の動画を見せたりして、どのようにすればよりよい話し合いになるか伝えます。
(4)「話し合い」
それぞれのグループごとに、「準備」の段階での内容に基づいて話し合いを始めます。それぞれの役割での話し合いが終われば、本文内容に関連したフリートークを行います。その際、生徒やALTと共に考えて作ったパーソナルクエスチョンをもとに話し合わせました。この話し合いは生徒主導で行われ、教師は話し合いに参加するのではなく、生徒の様子をよく観察して話し合いがうまく進むように助言をするファシリテーターの役割を担います。ここでは学習者同士の英語による意味のやりとりを十分に経験させることが大切です。
(5)「振り返り」
記録用紙やロイロノートなどを使って活動を行い、話し合いを通して得られたことや達成できたこと、課題や改善点などについて振り返りをさせます。
(6)「報告」
ここでは各グループからどのような話し合いが行われたか、英語で報告を行います。
本時で扱った内容は、写真家であった星野道夫氏の生涯について書かれたものです。星野氏の生き方やアラスカの環境問題について自分事としてとらえて理解し、自分の気持ちや考えを発信してほしいと考え、パーソナルクエスチョンを作らせました。読んでいて自分が疑問に思った点やグループメンバーと話してみたいと感じた点について質問を作るように指示しました。ALTには、生徒の質問作りを支援しつつ、いくつかオリジナルの質問を作成してもらいました。コミュニケーションをするうえで、質問ができる力は大切だと考えます。質問をすることで会話が豊かになり、相手のことをより深く理解できるようになります。以下が、生徒が主体となって作成した質問リストです。このリストの中から、グループで話したいことを選び、フリートークを行わせました。





愛媛大学でリテラチャー・サークルを研究されている
立松大祐先生(右)
教材をさまざまな角度から考え、本文の深い理解につながる
生徒はグループでの話し合いを通してさまざまな見方や考え方を知ることで、さまざまな角度からストーリーを味わえたり、表現の幅を広げたりすることができます。また、友達の意見を聞くことで、自分の考えを整理したり、理解を深めたりすることができます。
コミュニケーション能力の育成
自分で準備をすることで、話したいことを話せる時間になるため、生徒は喜んで英語を話します。また、ほぼ英語だけで行う活動であり、英語を聞いたり話したりする時間を多く確保することで、話すことへの抵抗感も徐々に少なくなり、コミュニケーション能力を高めることができます。
自律的な学習者に育つ
リテラチャー・サークルに向けて、生徒は自ら教科書と真剣に向き合い、何度も本文を読んでいきます。一人ひとりに役割が与えられるということで、責任感や自覚が生まれます。そして、自分の役割を生徒自身が「選択する」ということで、やらされる学習ではなく、自主的な学習になります。自ら積極的に学んでいこうとする瞳や姿を見るととても幸せな気持ちになります。
自己肯定感が高まる
自分の学習が、グループのメンバーの学びにもつながることで、自分にもできたという喜びや、誰かの役に立ったという達成感を味わうことができました。このような生徒の成功体験は、生徒の自信とやる気につながります。
温かい人間関係を築き、よりよい学級経営につながる
友達の気持ちや意見を聞くことで、新たな発見や驚きがたくさんあります。話し合いの中で生徒は、友達のよさや個性に出会うことができます。また、どのようにコミュニケーションを図っていけば、よりよい関係を築いていくことにつながるのか、生徒自ら学んでいくことになります。グループでの話し合い回数を重ねるごとに、自分の言葉で一生懸命に自分の思いや過去の経験を語り、友達の意見に一生懸命応えていこうとする姿勢が育まれていきます。安心して心を開いて話す環境を醸成することで、温かな雰囲気のある学級経営につながります。
教員にとって授業をするのが待ち遠しくなる
リテラチャー・サークルと出会い、実践していく中で、私自身も教えることが楽しくなりました。そしてリテラチャー・サークルをする日は、ワクワクしながら学校に行きます。リテラチャー・サークルは、生徒にとっても教師にとっても、「驚き」「発見」「楽しさ」「感動」が詰まった言語活動ですので、ぜひご覧になってくださった先生のクラスでもチャレンジしていただければ幸いです。


最後に長谷哲雄(ながたに てつお)校長先生へお話を伺いました。

1学年あたり2~3クラスで生徒同士の仲がよく、伸び伸びといろいろなことに挑戦する環境ができているそうです。河野先生はとても熱心な先生で、生徒たちも、とても楽しみながらも真剣に授業に取り組んでいるんだって!
今回のレポートはこれでおしまい。
では、次回もお楽しみに!
リテラチャー・サークルの詳しい内容はこちらから
http://lcrc.ed.ehime-u.ac.jp/literature_circle/
(取材日:2022年3月24日)

第67回 2025年12月3日
兵庫県神戸市立中央小学校(後編)

第66回 2025年11月10日
兵庫県神戸市立中央小学校(前編)

第65回 2025年10月29日
岡山県岡山市立山南学園

第64回 2025年8月6日
奈良県葛城市立白鳳中学校

第63回 2025年6月2日
吉川市立中曽根小学校(後編)

第62回 2025年4月22日
吉川市立中曽根小学校(前編)

第61回 2024年5月7日
三重県松阪市立久保中学校

第60回 2024年3月11日
福井県小浜市立加斗小学校

第59回 2024年1月18日
愛知県一宮市立大和南小学校

第58回 2023年12月27日
奈良県葛城市立新庄小学校

第57回 2023年11月24日
石川県金沢市立西南部中学校

第56回 2023年7月7日
茨城県守谷市立守谷中学校

第55回 2023年4月17日
群馬県富岡市立高瀬小学校

第54回 2023年4月13日
岡山県津山市立津山西中学校

第53回 2023年4月3日
奈良県葛󠄀城市立磐城小学校

第52回 2023年3月3日
滋賀県東近江市立蒲生西小学校

第51回 2023年2月20日
香川県高松市立古高松南小学校

第50回 2023年2月13日
愛知県愛知教育大学附属名古屋中学校

第49回 2023年1月23日
愛知県尾張旭市立東栄小学校

第48回 2023年1月16日
奈良県王寺町立王寺南義務教育学校

第47回 2022年12月13日
佐賀県佐賀市立城西中学校

第46回 2022年12月2日
岡山県立岡山操山中学校

第45回 2022年8月31日
岐阜県多治見市立笠原中学校

第44回 2022年8月10日
石川県野々市市立富陽小学校

第43回 2022年7月26日
愛媛県松山市立久谷中学校

第42回 2022年6月29日
秋田県由利本荘市立由利中学校

第41回 2022年5月9日
群馬県みどり市立大間々南小学校

第40回 2022年4月28日
鳥取県南部町立西伯小学校

第39回 2022年4月25日
広島県廿日市市立七尾中学校

第38回 2022年4月20日
福島県西白河郡西郷村立米小学校

第37回 2022年4月1日
茨城県つくば市立みどりの学園義務教育学校

第36回 2022年3月30日
岐阜県大垣市立中川小学校

第35回 2022年3月25日
長崎県五島市立奈留小中学校

第34回 2022年3月11日
山口県下関市立長成中学校

第33回 2022年2月4日
佐賀県伊万里市立二里小学校

第32回 2022年2月4日
岩手県奥州市立水沢小学校

第31回 2021年11月15日
北海道上川郡東川町立東川小学校

第30回 2021年10月25日
滋賀県湖南市立甲西北中学校

第29回 2021年9月2日
兵庫県たつの市立龍野西中学校

第28回 2021年3月17日
群馬県前橋市立細井小学校

第27回 2021年1月8日
千葉県富津市立吉野小学校

第26回 2020年12月16日
新潟県新潟市立上所小学校

第25回 2020年11月13日
東京都品川区立芳水小学校

第24回 2020年1月24日
神奈川県横浜市立荏田東第一小学校

第23回 2019年6月21日
宮城県大崎市立古川第五小学校

第22回 2019年5月31日
秋田県大館市教育委員会
大館市立上川沿小学校

第21回 2019年5月24日
山形県川西町立小松小学校

第20回 2019年5月17日
福島県白河市立みさか小学校

第19回 2019年5月10日
大阪府高槻市立大冠小学校

第18回 2019年4月26日
宮城県利府町立青山小学校

第17回 2019年4月19日
静岡大学教育学部附属浜松小学校

第16回 2019年4月12日
広島県海田町立海田小学校

第15回 2019年3月29日
宮城県七ヶ浜町立亦楽小学校

第14回 2019年3月22日
山形県庄内町立余目第四小学校

第13回 2019年3月15日
岡山県岡山市立石井小学校

第12回 2019年3月1日
鹿児島県薩摩川内市立平佐西小学校:後編

第11回 2019年2月22日
鹿児島県薩摩川内市立平佐西小学校:前編

第10回 2019年2月15日
茨城県守谷市立守谷小学校

第9回 2019年2月8日
三重県松阪市立香肌小学校

第8回 2019年2月1日
青森県つがる市立向陽小学校

第7回 2019年1月25日
北海道旭川市立富沢小学校

第6回 2019年1月17日
高知県高知市立春野東小学校

第5回 2019年1月11日
島根県松江市立義務教育学校八束学園

第4回 2018年12月28日
千葉県我孫子市湖北地区公民館

第3回 2018年12月21日
千葉県富津市立大貫小学校

第2回 2018年12月13日
東京都港区立笄小学校

第1回 2018年12月12日
東京都文京区立誠之小学校