

えいごりらが全国の学校を訪問し、
授業の様子や取り組みをレポートします!
みなさん,こんにちは。えいごりらです。
今日は千葉県富津市の大貫小学校にやってきました。

房総半島の南部に位置する富津市は,人口約4万人。東京湾に面し漁業が盛んなほか,「マザー牧場」や「鋸山」などの観光名所があり,観光目的でも多くの人が訪れます。大貫小学校は1873年に開校した歴史のある学校で,約200人の児童が学んでいます。
大貫小学校では2017年度から,高学年で70時間,外国語の授業を実施しています。今回授業を見せていただいたのは5年生のクラス。1学年は1学級。アットホームな学校です。

視聴覚室を英語教室として使用しています。
担任の松永亮先生です。もともと数学がご専門で,英語が得意ではなかったそうですが,教科化に向けて積極的に研修を受け,外国語の授業に取り組んでいます。

自分が頑張って英語を使っていくことで,児童も英語を使おうとするのだとか。児童との日常会話の中でも英語を使う機会を設けて,児童と一緒に学んでいるそうです。
そんな松永先生とチームを組み,授業をリードしていくのが,支援員の磯部文雄先生です。もともと中学校の英語の先生で,退職後に支援員となり,市内の小学校で指導されています。

これまでのご経験から,中学校での学びを見据えて,小学校段階で何が必要かを考えながら授業をされています。
さて,授業が始まります。あいさつと簡単なやりとりをした後,今日の授業の流れを確認します。

今日扱うのは『We Can! 1』Unit 6 I want to go to Italy。この単元は今回が5/8時間目で,児童も慣れてきています。
まずはPhonics Chantsからスタートし,続いて国名の確認です。コミュニケーション活動に向けて,基礎となる活動を丁寧に行います。

ひととおり確認が終わったら,国名をチャンツのように繰り返し言っていきます。児童も楽しく声を出しています。
続いて世界遺産の復習です。『We Can!』のデジタル教材を画面に映して,磯部先生が児童とやり取りをします。

Do you want to go to Kiyomizu temple?
Do you want to see the Statue of Liberty?
児童も「Yes!」「No!」と,積極的に答えます。
教室内でのやり取りは続きます。
磯部先生: What's this?
児童: It's Pyramid!
磯部先生: Where's the Pyramid?
松永先生: Let's Try!
児童: エジプト?
松永先生: Good job!
児童が使える英語をたくさん引き出しながら,会話が進みます。担任の松永先生も次々と英語を口に出し,児童もそれに答えます。
次にチャンツで表現の口慣らし。デジタル教材を使って全員で言った後,松永先生チームと磯部先生チームに分かれて,円になってチャンツを言っていきます。

全員: Where do you want to go?
児童1: I want to go to America.
全員: Good!
全員が行きたい国を言うまで続けます。
次に,useful wordsの確認です。see,eat,visitなどの動作を表す言葉や,nice,goodなどの様子を表す言葉を確認していきます。

2人の先生はたくさんのジェスチャーを使いながら,和訳をいれずに単語を紹介します。
日本語と一対一対応をさせるのではなく,単語の意味のニュアンスをつかんでほしいのだそうです。また,和訳を入れないことで,児童は自力で意味を考えようとします。児童の推測の力を育てることも,大切な狙いです。

My muscle is beautiful. だそうです(笑)。
このようなことができるのも,児童と松永先生の日頃のやり取りがあるからこそ。学級担任が授業を行う大きなメリットです。
つぎにLet's Watch and Thinkを行います。映像を見る前に,誌面の写真や国旗を使ってやり取りをしたり,出てくる単語を確認したりします。Let's Watch and Thinkの活動を行う際には,このような事前の準備がとても大切なんですね。

ThailandやGermanyなど,日本語と言い方が違う国名については,特に丁寧に確認します。Thailandってどこだと思う? と磯部先生が尋ねると,児童からは「台湾?」などと声が挙がります。このようなやり取りから,たくさんの気づきが生まれていきますね。
十分な準備をしたら,実際に映像を視聴します。Let's Watch and Think 5の活動です。

「トムヤムクン」という英語が流れると,「とみおくん?」という声が聞こえてきます。児童の発想は大人の想像を超えてきます。児童からはOne more, please.という声も聞こえてきます。映像を視聴している間,松永先生が机間巡視をして,児童の理解度をチェックしていきます。
続いてLet's Read and Watch.の活動です。磯部先生と一緒に文字を読んでいきます。

登場する英語は,これまで何回も聞いたり言ったりしているものです。また,Phonics Chantsなどを通して児童の中で文字と音が結びついてきているため,先生と一緒であれば声に出して読むことができます。
磯部先生が「読めたね,すごいね。」と褒めました。すると,松永先生が「この子たちすごいんですよ,私がちょっと何かを英語で書くと,それを読もうとするんです。」と言います。このやりとりを聞いた児童は嬉しかっただろうなあ。
最後は授業のクライマックス。Activityの活動です。まずは磯部先生がアメリカを紹介します。
Welcome to Ethan's Travel Agency! ※磯部先生は学校で「Ethan」と名乗られているそうです。

ジェスチャーをつけながら,アメリカの魅力を紹介していきます。児童からも「すごい!」「きれい!」と完成があがります。
この後,児童は自分たちが外国の国を紹介するためのポスターを完成させて,紹介の練習をしました。

Wow,次回の授業で発表ですね!
最後にあいさつをして,今日の授業はおしまい。
今日の授業で印象的だったのは,児童の「推測する力」。どんなに難しい英語でもひるむことなく,何を言っているかを聞き取ろうとしていました。

磯部先生が活動の前にたくさんのヒントを与えていることや,松永先生が英語を口に出し,児童の発話を励ましていることが,児童の積極的な姿勢に影響しているのだと感じました。このような姿勢は英語の授業だけで養われたものではなく,他教科の授業や日頃の学級経営の賜物なのでしょう。
もうひとつ感じたのは,先生がよく褒めるということ。ただ,何でも褒めるのではなく,できるようにしてから褒めることで,児童に自信がつくのだとか。例えば,一つ一つの活動が終わると,授業の流れのところに「はなまる」がつきます。

◯の種類や大きさを変えて評価をつけており,それが児童のやる気に繋がっています。以前磯部先生が巨大なはなまるをつけたときには,とても盛り上がったそうです。
担任の松永先生が学級経営を大切に行い,指導員の磯部先生がその意向を汲みながらTTを行うことで,児童は着実に力をつけていました。そんな2人の先生の間では,「児童が英語のコミュニケーションを楽しめるようにする」との目標が共有されています。

最後までチームワークもばっちり。
校長の鹿島順先生によると,大貫小学校では「夢・チャレンジ・大貫小」を合い言葉に,児童が英検5級にチャレンジすることを後押ししているそうです。できる勉強は好きになる。好きになることで,より先の勉強につながっていくとの考えから,児童が自信を持てるだけの力をつけられるよう,スタートした取り組みです。
担任の先生にも,一人で英語の授業ができるような授業力を身につけてほしいとのこと。大貫小学校では多くの学年,教科に教科担任を入れて担任の空き時間を作り,授業研究に当てられるようにしています。

デジタル化が進むと働き方も変わり,富津にいながらグローバルに活躍できるようになります。これからの時代を生きる児童に向けて「英語力を身につけて,富津から世界にはばたく人材になってほしい」と語ってくださいました。
今回のレポートはこれでおしまい。
次回もお楽しみに!
(取材日:2018年11月21日)

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第5回 2019年1月11日
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