みなさん，こんにちは。えいごりらです。
今春から続く新型コロナウイルス感染拡大のせいで，日本全国の現場の先生方は，大変なご苦労をなさっているとお聞きしています。この「全国の授業見学レポート」も自粛することになり，小学校英語の教科化が始まる記念すべき時期に，ご無沙汰することになってしまいました･･･。

でも，流行が多少の落ち着きを取り戻していることもあり，感染防止に細心の注意を払いながら，そろりそろりと全国の授業見学レポートを再開させていただこうと思います。引き続き，よろしくお願いいたします！

さて，今日は品川区にある芳水（ほうすい）小学校にやってきました。人工芝の校庭は今年の６月に完成したばかり！　できたてホヤホヤの新しい学校です。

この芳水小学校の名前は，近くに本社のある電気機器メーカー明電舎の初代社長である重宗芳水氏に由来します。芳水氏と，妻で２代目社長のたけ氏の夫妻が私財を投じて創設された歴史ある学校の一角には，なんと記念碑もあるんです。

一方で，入って正面入り口には水の流れや模様がさまざまに変化するモダンな噴水も。あまりにもきれいで，思わず中に入っちゃいました。

さあ，そんな「新しさ」と「伝統」が融合しているこの学校では，どんな授業が行われているのでしょうか。わくわく･･･。まずは６年１組の授業を見てみることに。

授業は『NEW HORIZON Elementary 6』のUnit 5　We all live on the Earth.を扱います。学級担任の星野理（ほしのさとる）先生と，JTE（Japanese Teacher of English）の小林悠（こばやしゆう）先生の見事なコンビネーションで，授業が進んでいきます。

まずは青山学院大学教授のアレン玉井先生が考案した，日本語の昔話を使ったJoint Story Tellingを行った後，文字と音の指導が続きます。文字指導では，学級担任の星野先生も積極的に参加します。

このUnitのテーマは「食物連鎖」です。基本的な表現を復習した後，小林先生は用意したパワーポイントを次々と子供たちに提示します。クラゲと見紛うプラスチック袋の写真，マイクロプラスチック･･･。そして，日本が人口一人当たりのプラスチック排出量が多い世界第２位の国である事実が伝えられると，児童からは「え〜」という驚きの声が。そして，芳水小学校で積極的に行っているSDGs教育につなげます。小林先生は「他教科関連など，児童の興味と連動させることが大切です」とおっしゃいました。

授業の終わりもまたスゴイ。学級担任の星野先生は「なんで今日の授業の内容を英語で学ぶ必要があるんだろう？」と児童に語りかけ，このように続けます。「世界で共通している問題は私達の問題でもあるよね。そして，世界と関わり合うときに必要になるのは英語なんだ。だから，これらの問題を英語で学ぶ必要があるんだよ」。
児童の真剣な態度がとても印象に残りました。

星野先生は，学級担任の役割は「活動の調整」であると話します。そして「恥ずかしがったり，内向的な子供もいます。だからそのような児童の実態をJTEに伝えるようにしています」と情報共有の重要性を指摘。その上で，「とにかく楽しく学ばせてあげたいんです」というモットーを教えてくれました。そんな星野先生に，小林先生も全幅の信頼を置いていると言います。
下の写真は，右から小林先生，星野先生，そしてこれからレポートする５年生担当の上村花子（かみむらはなこ）先生です。

さて，続いて５年生の授業を２時間続けて見させていただきました。Thank you!
JTEはいずれも上村先生。『NEW HORIZON Elementary 5』のUnit 5 Where is the post office?について扱います。
まずは単元ごとのテストを行いました。そのあと単語の確認などをしていきます。続いて，大きな写真の中から「位置」の単語などを使って，グループごとにクイズを出し合います。グループごとの競争なので，児童は大盛り上がり！

そして「Let’s Watch and Think」の活動を行いました。ヨーロッパと日本の「郵便局」を表すシンボルの違いについて，指導者用デジタルブックを活用しながら，問いかけていきます。「なんで違うんだろう？」「これは何のマークなんだろう？」。
児童からは「ホルンの吹くところから手紙が入ってポーンと出るから」などのユニークな返答も。上村先生はそれらの反応をきちんと受け止めながら，ヨーロッパの中世の写真などを提示して，児童の理解を深めます。そこから，ピクトグラムへの理解につなげていきます。

聞いていた僕も「なるほど〜」と思うことばかりでした。
ちなみに続いてお聞きした５年１組の授業では，「ピクトグラムのよさって何だろう？」との問いかけに「耳の聞こえない人には便利なのではないか」と答えた児童もいましたよ。
上村先生は「自分が楽しくないと子供も楽しくない。英語を使う楽しさや喜びを感じてほしい」と考えているそうです。

同校の齋藤早苗（さいとうさなえ）校長先生は「長年，指導を受けていたアレン先生の英語教育には精神性がある」とおっしゃいます。そして，「JTEの先生は『言葉を育てる』，私たち現場の教師は『心を育てる』という役割分担が大切」と説明した上で，「児童を導いていくためには，やはり教師が人間性を高めること，魅力的な人になることが第一です」と力強くおっしゃってくださいました。

あ〜実際の授業を見ると，やっぱり勉強になるなあ。
それでは今回のレポートはこれでおしまい。
次回をお楽しみに！　See you!

（取材日：2020年10月30日）