みなさん，こんにちは。えいごりらです。
今日は「忠犬ハチ公」のふるさと，秋田県大館市にやってきました。

大館市は秋田県の北部に位置します。人口は約7万2千人。大館駅で列車を降りると，市のマスコットキャラクター兼大館市教育委員会指導主事の「はちくん」がお迎えに来てくれました。
Nice to meet you!

2005年（平成17年）に西部の田代町，北部の大館市，南部の比内町が合併し，面積がそれまでのほぼ2倍になったそうです。名産品が多く，秋田犬，比内地鶏，きりたんぽ，大館曲げわっぱ，天然鮎が大館の5大名産品として知られています。

まずは「はちくん」の案内で大館市教育委員会を訪れ，市の取り組みとして行っている『おおだて型授業』について，高橋善之（たかはしよしゆき）教育長にお話しを伺いました。

高橋教育長によると，大館市では『ふるさとキャリア教育』に基づき，教師と子どもたちの知性・感性・人間性が響き合う真の学びの場を目指した『響学』の理念の下，どの学校のどの先生がT1を行っても，市としてめざすレベルの外国語授業ができる『大館スタンダード』に取り組んでいるそうです。

外国語（活動）の授業は，市全体で統一したカリキュラムに沿って進めています。中学年は年間約15時間，高学年は約50時間で，1時間毎の指導案は市教委のイングリッシュアドバイザーと外国語支援員のチームで作成し，各校でそれをもとに授業を組んでいるとのこと。

教材も市教委で作成しており，ワークシートやアルファベットカードなど，「はちくん」を使用したオリジナル英語教材を各校に配布しています。デジタル教材も自作し，アルファベットやフォニックスの学習を行っているそうです。

さらに，各校共通実践として市教委が作成した英語の掲示物を廊下や階段に掲示している他，オリジナルCD「はちくん ワンダフル イングリッシュソングズ」を歯磨きの時間や掃除の時間に流し，歌を通して語彙をインプットしています。

市を挙げて様々な取り組みを実践しているのですね！　これらの取り組みは地域からも評価されており，昨年は市の英語教育に賛同した企業から，全小学校に英語の絵本と地図が寄贈されました。

これらは，外国の有名な絵本や，3種類の地図（太平洋が中心，大西洋が中心，南半球が上）であり，世界の様々な見方や考え方に触れる効果を期待しているそうです。

さて，高橋教育長のお話を伺った後，取り組みの実態を探るべく，大館市立上川沿（かみかわぞい）小学校へと向かいます。「はちくん」に学校まで送ってもらいました。

上川沿小学校は田んぼや果樹園に囲まれたのどかな場所にあります。児童数は164名（平成30年度）。平成31年度で創立140周年を迎える歴史ある学校で，保護者や地域の方々による支援も多く，地域の核として大切にされています。

学区には野菜・米・果樹の栽培をしている農家が多く，農業関連の授業や行事も多いとのこと。平成30年度は全校梨狩り遠足や稲作学習（5年）を実施したそうです。また，地域の農業団体から枝豆30kgの寄付を受け，ゆでて給食でいただいたこともあったのだとか。

築20年の校舎には，秋田杉がふんだんに使われています。広い玄関ホールには，大館市の名産「曲げわっぱ」のシャンデリアがあり，存在感を放っています。

平屋の教室棟や広い体育館，グラウンドなど，恵まれた教育環境にあり，児童はオープンスペースの中でのびのびと育っています。

校舎に入ると，スクールキャラクターたちが出迎えてくれました。

右からハートさん（＝やさしさ），カッシーさん（＝かしこさ），ニュートンさん（＝たくましさ）。全教室で児童を見守っています。

校内には，市が作成した掲示物が児童の目に付きやすい場所に貼られています。

内容は月，数，曜日，日付，天気，フォニックス，アルファベット，反応言葉など。目から英語に慣れ親しむことをねらっているそうです。

さて，今日は外国語を学び始めてほぼ１年の5年1組の授業を見せていただきます。

１年目にもかかわらず，児童はものすごいスピードで英語表現や英単語を吸収しており，外国語でコミュニケーションをとることを心から楽しんでいる様子です。

T1として授業を行うのは，担任の小林潤先生です。特技はラグビー（高校・大学の部活動）と基礎スキー（SAJ2級）。今年で25年目のベテランで，今年度は理科以外の全教科を指導しています。

英語は専門ではありませんが，ALTや外国語支援員と授業に取り組んだことで，楽しくなってきたのだとか。間違ってもいいから，担任自らとにかく話し，児童と同じ目線で学ぶことを意識しています。

T2の松沢佑太先生は，ワーキングホリデーでニュージーランドに1年間滞在した後，2018年8月から外国語支援員として市内4校で活動しています。作曲や歌，ギター，プログラミング，イラスト，料理などの特技を持つ多才な先生です。

音楽を専門に学んだ経験から，英語独自のリズムを児童が感覚的に理解できるよう，授業で話す文はほぼ全てリズムで導入しているのだとか。英語らしい音に無意識に慣れ親しむことのできる環境づくりを目指しています。

さて，挨拶をして授業がはじまると，まずは大型絵本を使った読み聞かせを行います。企業から寄贈を受けたOxford Reading Treeシリーズの“The Toy’s Party”を扱います。

主人公が誕生日パーティーを開くため，様々なごちそうを用意するという物語。その内容をもとに，食べ物の話題で英語を使った簡単なやり取り（インタラクション）を行います。

続いて，担任の小林先生と支援員の松沢先生が，それぞれ自分の「オリジナルランチ」を紹介し，児童に活動の見通しを持たせた後で，Today’s Goal「積極的にオリジナルランチを紹介しよう」を確認します。

ここでは市教委作成のオリジナル教材を使って，授業を進めます。

次に，児童は4人ずつグループになって，先生の発表を参考に各々のランチを紹介し合います。

積極的に友達に質問し，答えに困ったときには教え合います。みんな活発に楽しく活動しています。

続いて，発表したい児童が前に出てきて，みんなの前で発表します。

先生方は児童のちょっとしたつぶやきにも反応言葉を投げかけ，児童が積極的に発表（プロダクション）したくなるような雰囲気作りを行います。

徐々に発表したい児童が前に出てきて，いつのまにか教室の前がいっぱいになりました。

児童も英語で話すことが楽しそう！　みんな積極的に参加し，Today’s Goal「積極的にオリジナルランチを紹介しよう」に迫っていました。

最後に自己評価を行います。各々がふり返りシートに記入した感想を，みんなで共有します。

「ジェスチャーも使って，友達に分かりやすく説明できた。」「分からなくなっても，班の人が教えてくれたので，笑顔で積極的にオリジナルランチを紹介できた。」「外国語を使って，楽しみながら友達との仲を深めることができた。」などの感想が挙がりました。

みんな楽しく協力し合いながら，外国語でコミュニケーションを取ることができましたね。Good job!

授業の後，戸田孝彦校長先生にお話を伺いました。上川沿小学校では，イングリッシュルームが校長室の向かい側にあるため，児童が楽しそうに英語で話す声が聞こえてきて，大変嬉しいとのこと。

朝の会や帰りの会などでは，クラスルームイングリッシュやほめる言葉を積極的に活用しています。学びを普段の活動の中に活かしていくことが，学習の深まりにつながり，活きる英語につながるため，日常的に英語に親しんでほしいのだそうです。

授業や日頃の実践を担う先生方には，楽しい英語活動を心がけ，英語好きの児童を育ててほしいのだとか。そして児童には，今後も英語に興味を持ち続け，将来的にはグローバルな観点で『ふるさと大館』を担う『人財』になってほしいと語ってくださいました。

今回のレポートはこれでおしまい！　次回もお楽しみに！

（取材日：2019年3月5日）