みなさん，こんにちは。えいごりらです。
今日は山形県川西町の小松小学校にやってきました。

川西町は山形県南部に位置する人口約1万5千人の町。県内を流れる最上川の西にあることから，川西町と名付けられました。「川西ダリヤ園」では650種100,000本のダリヤが楽しめる他，200基に及ぶ古墳群である下小松古墳群や，東北最大級の前方後方墳である「天神森古墳」など，歴史的な遺産が数多く残されています。

今日訪れた小松小学校は明治4年9月18日に開校し，創立147周年を迎えた歴史ある学校です。全校児童数は262名。川西町出身の直木賞作家，井上ひさし氏の母校で，周囲には同氏から寄贈された膨大な蔵書からなる「遅筆堂文庫」や，劇場を有する情報発基地「フレンドリープラザ」など，文化的な施設が充実しています。

校舎は平成26年に改築されたばかりで，木のぬくもりが感じられるとてもきれいな建物です。こちらはイングリッシュルーム。

設備も新しく，電子黒板などのICT機器も充実しています。

さて，川西町では12名の先生方で構成する英語教育推進委員会を立ち上げ，指導計画やレッスンプランの作成に取り組んできました。平成27年度より全学級でイングリシュタイム（週１回朝のモジュール授業）を実施し，指導力向上や時数増加への対応に取り組んでいます。

28年度は，英語推進リーダーとして文部科学省の研修に参加した英語専科教員の市川先生が中心となり，モジュール授業の指導計画作成や指導力向上について研修してきました。

翌29年度にはスカイプによる学校間交流授業を試行したり，レッスンプランの作成や指導の体制の整備などについて各校へ具体的な提案をしたりするなど，着実に指導体制が整ってきています。

そして今年度（30年度：取材時）は，時数増に向けた指導計画の改善に取り組んでいます。英語専科教員の星先生とALTの先生が各学校を回り，3，4年生で15時間，5，6年生で55時間の授業を行っているほか，2年生でも3年生に向けて5時間程度の授業を行っています。

こちらは打ち合わせの様子。左から，英語推進リーダーの市川先生，専科の星先生，ALTのアーロン先生です。

ICT機器の活用にも積極的に取り組んでいます。今年度は，基本的な授業の進め方を15分程度に編集して，YouTubeで町内の小学校に配信しているとのこと。

また，6年生はニュージーランドの小学校とスカイプで交流し，互いの学校生活を紹介し合ったそうです。児童は自分たちの英語が通じたことをとても喜んでいたのだとか。

さて，今日は5年2組の授業を見せていただきます。いつも明るく元気な子どもたちは，外国語の授業が大好き。普段から友達と楽しく会話をしたり，テキストブックの内容を注意深く聞き取ったりしています。

また，学習が終わると「○○さんの発音がよかった」「スピーチが分かりやすかった」など，友達のよさをたくさん見つけることができるクラスなのだそうです。

担任の鈴木先生は学生のころから英語が苦手でしたが，なぜか外国の方と関わることが多く，「英語を話したい」と常々思っているとのこと。

子どもたちと一緒に楽しく学習しながら，先生自身も学んでいます。児童には，コミュニケーションの大切さを感じるとともに，日本だけでなくいろいろな国の様子に興味を持ってほしいと考えているそうです

鈴木先生と一緒に授業を行うALTのアーロン先生はアメリカのアイオワ州出身。英語指導員として，10年前に来日しました。

奥様は日本人で，子どもが二人いるそうです。趣味はサッカーと読書で，生き物について調べるのが好きなのだとか。川西町の子どもたちにたくさん英語を教えたいそうです。

さて，今日は『We Can! 1』Unit 9“Who is your hero?”の授業を行います。本時は5/6時間目で，目標は「My heroのスピーチの準備をしよう」。

あいさつをして授業が始まると，まずは担任の鈴木先生を中心にSmall Talkを行います。前時にはI can play ~.やI am good at ～.などの表現を使って，クラスのだれが何をできるのか，何が得意なのかについて情報を得ています。今日はその情報をもとにしたクイズを行います。

鈴木先生：　I can jump high. I’m good at playing basketball. Who am I?
児童：　Are you Taeko?
鈴木先生：　Yes, that’s right!
みんな友達のことをよく知っていてすごい！

続いて，『We Can! 1』のデジタル教材に合わせて，アーロン先生と一緒にチャンツを言います。テキストp.87の“Who is your hero?”のチャンツです。

単元を通して繰り返し扱っているため，児童もすっかり慣れている様子。みんなで声を出しながら，英語の表現に触れていきます。

次に，Let’s Listen 5の活動を行います。デジタル教材を使って，登場人物のHanaとKazuがMy Heroについて話している内容を聞き，それぞれのheroが得意なことを聞きとります。

音声はそれぞれ3回ずつ聞きます。1回聞くごとにデジタル教材を止めて，聞き取れた事をみんなで共有します。

鈴木先生は聞き取れた事を「コンセプトマップ」に日本語でまとめ，黒板に貼ります。その内容もとに，Hanaが紹介したお兄さんのFujita Shoと，Kazuが紹介した友達のMariaについて，分かったことを英語で確認します。

一人で全部聞き取るのは難しくても，少しでも聞き取れたことをクラス全体でつないでいくことで，話の全体像が見えていくのですね。

みんなで情報を共有したら，その内容を『We Can!』の誌面にまとめて，もう一度デジタル教材の音声を聞きます。

一回目に聞いたときと比べて，格段に内容が分かるようになった様子です。

続いてActivity 2「あなたのヒーローを紹介しよう」の活動を行います。まずはデジタル教材を使って，小学生の女の子がお姉さんのkayoについて紹介するスピーチを聞きます。聞き取ったあと，このスピーチの上手なところを，みんなで確認します。

次に，聞き取った内容を参考にしながら，自分が紹介したいheroについて隣同士で説明し合います。そのheroは何が得意で，何ができるのかなど，heroの名前は伏せたまま，紹介し合います。

聞き手もしっかりと相手の話すことを聞いており，楽しくコミュニケーションを行います。

ひととおり会話をして話したい内容を整理した後，黒板に貼ったコンセプトマップを参考に紹介するheroのことをシートに書き込み，次の時間で行うスピーチの準備をしました。

次時はいよいよMy heroを紹介するスピーチの時間です。
うまく想いを伝えられるといいね！　Good luck!

最後に，小林英喜校長先生にお話を伺いました。校長先生はなんとこの小松小学校の卒業生！　47年前，100周年の記念式典の際には児童代表として「お祝いのことば」を述べられたそうです。

校長先生によると，小松小学校ではこれまで英語推進リーダーが中心となって授業を進めてきましたが，これからは担任の先生が主導する授業に変えていくことが重要だと考えているそうです。そのために，次年度からは学校研究として英語に取組みたいと考え，準備を進めているとのこと。

ただ，小学校では必ずしも英語が得意な先生方ばかりではないので，町の英語教育推進委員会が中心となって，英語の授業への担任の抵抗感を取り除く取組みを進めています。そのおかげで先生方一人ひとりの意識はだいぶ高まってきているのだとか。これからは，英語専科の先生の授業をモデルに，学級担任がＴ１を担当するための研修をさらに充実させたいと語ってくださいました。

今回のレポートはこれでおしまい！　次回もお楽しみに！

（取材日：2019年3月5日）