みなさん，こんにちは。えいごりらです。
今日は静岡県浜松市の静岡大学教育学部附属浜松小学校にやってきました。

浜松市は静岡県最大の都市で，人口は約80万人。市の総面積は岐阜県高山市に次ぐ全国2位の大きさを誇ります。日照時間が長く，気候が温暖な暮らしやすい街で，明治時代から産業都市として栄えてきました。「ものづくりのまち」として，現在も自動車や音楽楽器の製造がさかんに行われています。

今日訪れた静岡大学教育学部附属浜松小学校は，そんな浜松市の静かな住宅街の中にあります。

全校児童数は414名。1916年に静岡県浜松師範学校附属小学校として開校し，今年で103年目を迎えました。教育目標の「未来を切り拓くたくましさを秘め，新たな時代を生きる子どもの育成」に向けて，日々の教育活動に取り組んでいます。

さて，同校では，1～4年生は総合学習として週1時間，5・6年生は外国語科として週1.5時間，外国語の授業を行っています。今日は6年1組の授業を見せていただきます。個性豊かで，笑いが絶えないクラスなのだとか。

児童数は34名。英語学習への意欲も高く，広島への体験旅行（修学旅行）では，外国人旅行者に英語で浜松のよさを伝えてきたそうです。

担任の常名剛司先生は，6年生2クラスの英語の授業を担当されています。埼玉県熊谷市のご出身で，アフリカやアジアの在外教育施設で教師としての経験を積んできました。

海外で教師を始めた頃，同じように海外で挑戦していた中田英寿や名波浩といったプロサッカー選手たちが活躍するニュースを聞くたびに，「彼らも頑張っているのだから，自分も負けていられない」と刺激を受けていたとのこと。名立たるスター選手たちに情熱だけは負けまいと，教育実践に励んできたそうです。

常名先生によると，浜松小学校ではPBL（Project/Problem Based Learning：課題解決型学習）による単元デザインを行い，児童の学習意欲を高めています。また，各教科・領域とも連携し，英語の4技能との学びの相乗効果を得るCLIL型学習を行っているそうです。

授業では，「生活と結びつき，社会に働きかける本物の文脈づくり」を大切にしているとのこと。例えば5年生では「Welcome to Shizuoka 静岡へようこそ」や「What would you like? 留学生に日本食をふるまおう」，6年生では「I like My Town “Lonely Planet”［注1］にHamamatsuをのせよう」「Save My Life 留学生に防災劇を発表しよう」などの単元に取り組んできました。
［注1］Lonely Planet…世界100ヶ国以上の国で発売されている旅行ガイドブック

今日扱う単元は「Build a Robot. 宇宙ゴミの処理ロボットを作ろう」。タイトルを聞いただけでもわくわくします!

堀江貴文氏や前澤友作氏の宇宙旅行，また，はやぶさ2が惑星のリュウグウに到達したニュースに関連し，宇宙を題材として扱った授業です。『We Can! 1』Unit5 “She can run fast. He can jump high.”とも関連して，授業を行います。

この単元は，外国語6時間＋総合3時間で，教科をまたいで1単元としています。まず外国語科の4時間で「宇宙ゴミ問題」を紹介し，続いて総合の3時間で宇宙ゴミを処理するプログラミングロボットを作ります。最後に，再び外国語科の2時間を使って，作ったロボットの機能を英語で説明します。プログラミング的思考と英語の技能を本物の文脈の中で育むことを狙っているそうです。

前回の授業では，日米の子どもたちの「将来の夢」から，宇宙飛行士の話題を導入しました。2/9時間目にあたる本時は「国際宇宙ステーションでできることを考えよう」がテーマ。無重力の環境でできることとできないことについて考えます。

あいさつをして授業が始まると，まずはみんなで歌を歌います。

今日歌うのはDaniel Powterの“Bad Day”。日本でも大ヒットしましたね。

次にGuessing Gameを行います。まずは全員で単語を確認します。

先生の後に続いて繰り返し単語を言っていきます。

続いて隣の友達とペアになって，一方が単語を選んで英語やジェスチャーでヒントを出し，もう一方がどの単語かを当てて英語で答えます。

1分間で何個，当てることができるかな。いちばん多く当てたチームは13個の単語を当てました。Good for you!

ここから，いよいよ今日の本題に入ります。まずは宇宙開発に関する単語を提示します。

International Space Station，Astronaut，Gravity，Earthなどの単語を，絵カードを使って確認していきます。

次にSmall Talkを行います。今日のお題は「What do you want in ISS（International Space Station）?」。Guessing Gameで扱った単語などを参考に，国際宇宙ステーションに持っていきたいものを伝え合います。

先生がお手本を見せた後，1分30秒の時間を計ってスタート!
“What do you want in ISS?”“I want a TV.”
「ゲーム」「友達」「Wi-Fi」など，児童は次々と欲しいものを言っていきます。

「実験動物」を持っていきたい児童がいたことから，「実験」は英語で何て言うんだろう，という話題になりました。先生がすぐに答えを教えずに児童に考えさせると，児童からは「test?」という発言が挙がります。Great! 先生は児童を褒めたあと，「test」の他に「experiment」という単語があることを伝えます。

続いて，先生が用意した映像を視聴します。国際宇宙ステーションで働く宇宙飛行士が，無重力（zero gravity）の宇宙空間で実験を行う映像です。

宇宙飛行士が布に水を含ませて，その水をしぼることに挑戦します。無重力で水をしぼることはできるのかな。Can, or can’t? 先生は児童の様子を見ながら適宜動画を止めて，簡単な英語を使った解説を加えます。

映像を見た後，「動作」の絵カードを使って，宇宙空間でできることとできないことをみんなで考えます。

先生：　Can they fly? Can, or can’t?
児童：　They can fly!
“They can turn.”“They can’t stop.”“They can speak English.”“They can’t run.”“They can’t drink.”など，様々な動作についてみんなで考えます。

ここで，先生はもう一つ用意していた映像を児童に見せます。宇宙飛行士の大西卓哉氏がISSでのトレーニングの様子を紹介する映像です。無重力の空間では走ることはできませんが，トレーニングの際にはランニングマシンにハーネス（チェーン）で体をつなぎ，重力がある状態を再現するそうです。

このように，無重力の状態でも，条件を変えればできることがあることにも気づかせていきます。

“They can run when they use chains.”“They can drink when they use a straw.”

やや高度な表現ですが，児童はwhenを使って条件を付け加えられることに気づいている様子です。その流れで“Today’s Writing”として，先生が黒板に書いた文を書き写します。

“They can run when they use chains.”。児童は一文字ずつ，丁寧に書き写します。

最後に，絵本『My Very First Space Book』の読み聞かせを行いました。

初めて月に行った人の話や，宇宙飛行士が行う訓練の話，ISSでの仕事の話などを簡単な英語で紹介します。みんな真剣な顔で先生の話を聞いています。

この後ふり返りとあいさつをして，今日の授業はおしまい！

英語にも宇宙のことにも詳しくなった1時間でした。Good job!

副校長の木村真也先生によると，静岡大学教育学部附属浜松小学校では，近隣の小学校に先駆けて，平成10年頃から小学校外国語活動に取り組んできたそうです。

当時はALTが中心となって英会話塾的な授業を行っていましたが，徐々に学べる授業，プロジェクト型英語学習として授業の形が変わってきたとのこと。英語専科教員を中心に授業を行う学校も増えてきていますが，学級担任が中心に行なえるよう，今後も環境整備を進めていきたいと語ってくださいました。

今回のレポートはこれでおしまい！　次回もお楽しみに！

（取材日：2019年2月27日）